「もしもの時は、代わりにやってほしいって言われてな」
そっか。奏也も賢人も偉いなー。
「…けど、それは建前ってやつで」
「え?どういうこと?」
「ほんとは先に、俺が覚えたくて覚えたんだ」
「賢人、王子役やりたかったの?」
知らなかった。
「ああ。七海が姫役やるってわかってたら、絶対やってた」
ん?
「奏也はいいよなー、七海と堂々とこんなに触れ合えるんだからな」
なんかちょっと、言っている意味がわからない。
「奏也が羨ましい」
賢人はそう言うと、私の方をまっすぐ見た。
「七海、俺はお前が好きだ。付き合いたいと思ってる」
え…
「明日の後夜祭で返事を聞かせて欲しい」
賢人はそれだけ言うと体育館から出ていってしまった。
賢人が、私を?
信じられない。ほんとに?
でも、さっきの顔、冗談を言ってるようには見えなかった。
しかも返事は明日って…どうしよう。
〜奏也side〜
「七海、俺はお前が好きだ。付き合いたいと思ってる」
けんちゃん…!
忘れ物を取りに体育館に行ったらけんちゃんとななみんがいた。
なんか普通じゃない空気だなと思って様子を見てたら、けんちゃんがまさかの告白。
僕はすぐさまその場を離れた。
けんちゃんに先を越された。
このままじゃ僕は告白すらできないかもしれない!
けど、きっとななみんは今けんちゃんのことで頭がいっぱいだ。
今はまだ、しちゃいけない。
ななみんを困らせるだけだ。
でも、だったらいつ告白すればいいんだ?
僕は完全に告白のタイミングを見失っていた。

