そして迎えた夏休み。
私と奏也は大役とあってセリフの量も多かった。
なかなかおぼえられなくて大変だったけど、2週間も経つと台本を見なくても言えるようになっていた。
そこからは動きもつけて、セリフに気持ちを込めながら練習を繰り返した。
「姫、私は嘘などついていません。この気持ちは本物です」
「いや!離して!もう誰も信じられない!」
私と奏也のなかなかの熱演っぷりにみんなの気合いもすごかった。
「ななみん♪かわいかったよ♪」
「奏也も、様になってたよ!」
いつもと違う言葉遣いの劇中では奏也はまるで別人のようだった。
雰囲気はかわいい感じなのに、芯があるっていうか。
「あ、そうだ!ななみん明日空いてる?自主練に付き合って欲しいんだ♪」
「あ、ごめん。明日はちょっと用事があって」
「そっかぁ。残念。友達と遊ぶの?」
「あ、うん!そう!」
本当は、明日は祐とデートの日なんだけど…、さすがにそれは言えない。
「じゃあラスト1回!さっきの続きから!」
「はーい!」
今日はこれが最後の練習。
「待ってください!」
「やめてっ…」
奏也の手を振りほどこうと後ろを向いた瞬間。
……!!
腕をいつもより強く引っ張られて奏也の腕の中に勢いよく入ってしまった。
「もう離しません。どこにも行かないでください」
奏也…?

