こんな何気ない諒君との会話が、すごく幸せに思えた。

諒君の部屋には女子なんていなくて、きっと沙織とも何もなくて。

いつものようにあたしを誘ってくれる。

あたしは、この幸せを壊したくない。





「ちーちゃん、レポートもう終わるから、もうちょっと待ってね」




そう言いながら、なおもキーボードを叩く諒君。

あたしは、無意識にその指先を見ていた。




男らしい少しごわっとした手……ではなくて、女性のように滑らかな手。

だけど、手首には血管が浮き出ていて、ドキッとしてしまう。

あぁ、あの手で……




あたしの頭にイケナイ妄想が浮かんだ時、




「ちーちゃん……俺、友達から聞いたんだ」




イケナイあたしとは明らかに違うテンションの諒君が、静かに口を開いた。