「え?ちーちゃん、覚えてないの?」 諒君は目を覚まし、その大きい瞳であたしを見て、お決まりの台詞を言う。 そして、お決まりのように頷くあたし。 すると、諒君は少し困った顔で自分の額に手を伸ばした。 「うーん……覚えてないの? ちょっとショック」 ショックなのはあたしだよ…… なんでこうなったのか、想像もつかない。 いや、あたしが誘惑したからに決まってるんだけど。 もっとちゃんと諒君を見て、あたしは諒君にとってどんな存在なのか見極めなければならなかったのに。