ユウは己の死を覚悟し、きつく目を閉じた。



 しかし、いつまでたってもユウは攻撃による新たな痛みを感じない。



 
 


 それは、



 ユウと、ロラン



 二人の間に人が立っていたから。






「ったく、二度と教師はやらん。何故この俺が任務より子供を優先せにゃあならんのだ」



 男の声がする。



 酷く不機嫌で、苛立ちを前面に出した、ここには居なかった人の声。



 真っ黒な髪を乱暴にかき上げ面倒くさそうに首を曲げる。



 男はユウの方を振り向き、一言



「クソガキ、てめえのせいだからな」



 と言った。




「あんた...!!」




 男の名は、ロゼン・ブラック



 だがその姿はまさしく、ジンノ・プリ―ストン、彼であった。





 突如姿を現したジンノは、眉間にしわを寄せながらその手をユウの頭にのせる。



 すると、闇の魔力の影響からかユウの身体から魔力が抜けていくではないか。



 それに伴いユウの〈牙獣浪々〉の魔法が解けて元の姿に戻っていく。




「体内に閉じ込めていた魔力を無理やり取り出すことは体の崩壊につながるが、一度体外に出してしまえば話は違う。ルミの力より俺の力の方が手っ取り早い」



「??何を、」



「ああ、そうかてめえは知らなかったんだな」






 そう言うとジンノは怒鳴る。



「おいルミア!!何故さっさと片付けなかった!お前一人でもこの程度なら簡単に始末がつけられた筈だ!」



 もしやお前



「このクソガキが魔法を使えるようになるまで待ってたな!!?」








「い、一体何の話を...」



 困惑するユウを除け者にして、ジンノは大声で叫ぶ。



 すると



「声が大きい、ちゃんと聞こえてるから叫ばないで」



 と、どこからか彼女が姿を現した。



 ロランの攻撃で倒れたはずのルミアが、無傷で。



「先生ッ!?」


「ホワイト先生!!!」


「先生が無事だっ!良かった!!」



 喜ぶ生徒たちににっこり微笑みを向けながら、その手はジンノの大声への当てつけの様に耳をふさいでいる。



「兄さんが遅いからよ。二人そろわないと動いちゃいけない決まりだった。式神を送ったのになかなかこないからしょうがなく...」



「しょうがなく?最初からそれが狙いだったんじゃないのか!?」



「あーーー知らない、なあーんにも聞こえなーい!!」