君への唄

春の柔らかな匂いを鼻で感じ、初夏の梅雨の空気を肌で感じ、秋に鳴く鈴虫の声を耳で感じ、冬の凍てつきを心で感じた。


季節をこんなにも感じることは今までなかった。

ゆとり無く生きていた事を今更ながら実感した。

季節を感じる度に僕は“思い出”を忘れていった。


子供の頃の遊んだ思い出、好きだった場所、懐かしいラムネの味…


いつ君のことを忘れてしまうのか…?

いつ君のことを永遠に失うのか…?

それだけが恐ろしく、恐怖だった。