「未桜なら絶対できるから。
俺は未桜なら今までの特訓の成果を発揮して、いやそれ以上のものだってきっとできる。
この間はふつうって言ったけど、本当はうまかった。
だから、今日はあれよりおいしいのを作って見せろ、いいな?」
照れくさそうに今度は翔斗があたしから視線を外した。
「本当に?本当に美味しかった?」
「だからそうだって言ってるだろ。何度も聞くな」
翔斗はあたしのほっぺをグイ―っと伸ばすとようやく手を離してくれた。
「痛いー!」
「俺はただぼーっとしてたヤツを起こしただけだ」
やっとあたしにいつものやる気が出てきた。
横にいる尚くんを見ると、彼は今日は分身を使わずに1人で黙々とやっているようだった。
よし、翔斗にもらった最初で最後の大役だ。
絶対にやり通したい。
翔斗と一緒においしいケーキを作りたい。

