何も起きない?
そう思って油断して俯いていた顔を上げると……両手であたしの両頬をむにっと強めに引っ張られた。
目の前には眉間に皺を寄せて怒っている翔斗。
「俺から目を逸らすな。ちゃんとこっちを見ろ」
「……だって」
「だってじゃねぇ。
いいから、こっちを見ろ」
あたし仕方なく観念して翔斗に目を合わせた。
そしていろんな方向からの視線を感じて、これを審査員の先生含め、全校生徒に見られてると思ったら急に顔がボっと熱くなった。
目の前にいる翔斗と目が合った時、彼は絶対怒っていると思ったのに
さっきのは言葉だけだったの?って思うくらい穏やかな表情をしていた。

