「未桜?」
翔斗に呼ばれてハッとした。
どうしたんだろう、気のせいだよね。
速く運んで次のお手伝いしないと。
ケーキの側面を両方の手でそれぞれ持ってオーブンから取り出した。
だけど取り出した途端、さっきのように変な感じがして……調理台の上に運ぼうとした時には一瞬にして手の力が抜けた。
え……なんで……。
そして、出来上がったばかりのケーキがカタンッ!と音を立てて床に落ちた。
それを見ていた翔斗が床に落ちた反動で横に崩れそうになっていたケーキを素手で押さえていた。
「……っ」
普通じゃない音がしてあたしたちの方に多くの視線が刺さった。

