「何やってんだよ、早く中に入れ。どっち向いてんだよ」
「……うん、ごめん」
怖くなった。
また何かが起きるの?
さっき聞こえた声はあたしをこの世界に連れてきた人のものだった。
翔斗が何も言わないってことは聞こえていなかったってことだろう。
“俺は絶対に翔斗をつぶす”
ってどういうことだろう。
でもそんなことを悠長に考えている時間はもうない。
あと10分で試合が始まる。それまでにだって必要な材料や道具を揃えなくてはいけない。
あたしは両手でパチンっと自分の顔を叩いた。
「お、おい!そこまで気合い入れなくても」
あたしの行動を見てちょっとびっくりしたのか動揺している。
だめだ、今はこれから始まる試合に集中しないと。翔斗の迷惑にだけは絶対になりたくない。

