気付くと、あたしは靴を脱いだまま玄関に立っていた。



電気をつけたまま、そこに用もないのに棒立ちしていて。



「あたし、なんでここに?」



「速くしろよ。特訓の続きやるぞ。



フルーツを切って、デコレーションするから今すぐ頭に入れろ」



「はい!」



あたしはきゅっと赤いネクタイを結び直して、手を綺麗に洗うと



さくさくと説明をしながらフルーツを手際よく切っていく翔斗をじっと見つめた。



そして今度はあたしがやってみて、ダメだったらもう一度やり直しての繰り返し。



あたしが一度逃げ出したからかほんのちょっとだけ言い方がきつくなくなった気がする。



そうやってケーキコンクールのギリギリまであたしたちは特訓を重ねたんだ。