「未桜をそんなに甘やかすな」



翔斗はそう言いながら、あたしの失敗したボウルを片付け始めた。



あたしは『自分でやるからいいよ!』と言いながら翔斗の所に行くけど全然聞く耳を持ってくれない。



「素直に答えただけだよ。俺は翔斗と違って褒める時はちゃんと褒められるから。



特訓するのはいいけど、あんまり厳しい言葉ばっかり言ってると次逃げ出されたら未桜ちゃん帰ってこなくなっちゃうよ?」



挑発するように尚くんは笑いながら、自分の使っていたボウルと材料を調理台の隅から引き寄せて自主練を再開していた。



「余計なお世話だ。俺だって素直に思った言葉を言ってるだけだ。



褒めるほどではないから今回は褒めなかっただけだし」



翔斗は音を立てながら調理台に洗った道具を置いて、あたしはそれをふきんで拭いて元の場所に戻した。



そして綺麗な状態に戻すと、尚くんに作業中悪いなって思いながらも声を掛けた。