冗談なのか、本気なのか分からない。



でも、尚くんは翔斗から目線を逸らさない。



「フッ、メレンゲも作れない、チョコレートを沸騰で溶かすド素人だけど、コイツは俺に持ってないものを持ってる。



不利になんか絶対ならないさ」



翔斗はそう言い放つとキッチンから出ていった。




"コイツは俺に持ってないものを持ってる。"



頭の中で鮮明に何度もリピートされる。



みんなの前でそう言ってくれたことがすっごく嬉しい。本当にそう思ってくれてるってことが伝わってきた……。



実際には俺に持ってないものって具体的にはよくわからないけれど。今はそれでもいい。



知らないからこそあたしにできることなのかもしれないから。


そして尚くんは今度はあたしの方を見て「未桜ちゃん、朝ごはんなくなっちゃうよ!急いで!」と言ってきたので急いで着替えるために自分の部屋に向かったんだ。