土曜日。


昨日、希望さんが言った通り、幸香ちゃんは朝一でうちに預けられて楽しく遊んでいる。


私とじゃなくて。


「おーちゃん。これは?」


「何だろね~。」


『おーちゃん』というのは、まだはっきり話す事の出来ない幸香ちゃんが、先生を呼ぶときに使う呼び方だ。


「てか……。」


「ん?何、千音。」


眉間にしわを作って先生を見つめる私を不思議そうな目で見返す。


「先生…ゲロ甘…。」


確かに、普段から甘くはあるけども!


この甘さは尋常じゃない。


「そうか?こんなもんじゃね?」


今日は構ってくれなさそうだなと悟った私は、本を手に取る。


「あ、千音。今から公園行くし。」


そっか…。昨日言ってたな。


「近所のですか?」


「うん。」


家のすぐ傍にちっちゃな公園があった。


近所って言っても、私は行き方覚えてないけどね。