「じゃ、私はここらでお暇(いとま)するわ。」


「おー帰れ。幸香は置いていってもいいぞ。」


ほんと先生、幸香ちゃん好きなんだな…。


「イヤです。じゃあね、千音ちゃん。」


「はい、また来てください。」


がちゃりと扉が閉まる。


「はぁ…疲れた。」


ぐったりとソファに座り込む先生。


「先生、何もしてないじゃないですか。」


髪も乾かさずに、何してるんだ。


「気疲れってやつ?たまにしか会わないから。」


洗面所から取ってきたドライヤーで先生の髪を乾かしてあげる。


「ありがと。千音。」


先生の柔らかい声に心臓が暴れだしたのも、きっとあんな事を言った希望さんのせいだ。


「今夜…か。」


私の小さな声は、ドライヤーの大きな励ましの声に負けてしまった。