「お爺さん、お話しよう!」


桜の木に話しかけてすぐに、お爺さんは現れた。

あれこれ悩んでいる内に結局私は時桜の元を訪れていたのだ。


「あやつとは仲直りが出来たか?」

「うん!梅食べてくれてたの!」


「良かったな。」と空を眺めながら微笑むお爺さんは元気そうで。


「この頃、森から邪悪な気を感じる。」


ほんの少し、目を細め森を見つめる。

あの森は本来、黒狐を始めとした多くの闇の妖怪が住んでいるから邪悪じゃない方がおかしいんだけど。

もしかして、邪悪な気が強くなりつつあると言いたいんだろうか。


「お前は狙われやすい。簡単に白の元から離れるでないぞ。」


その忠告は今までの白や水湖様から言われた忠告よりも、妙に意味深で。

背筋がゾクリとした。


(……ん?)


足下に何かもふもふした物を感じる。
視線を下に移せば、黒い毛玉が1つ。

それは、ちょこまかと動くちまっこい何か。

しゃがんで撫でてみると、何とも不思議な動物だった。


白く小さな角が頭に生えていて、黒くて柔らかい毛、八重歯が2本鋭く尖っている。


でも見る限り、


(可愛い子犬…!!)


「君可愛いね~。よしよし。」


犬の妖怪なのかよく分からないけど、尻尾フリフリするところは犬っぽいな~。


「ぴす!!」


(え?)


鳴き声が何とも不思議な。
こんな鳴き声初めて聞くな~…。

何だかとっても癒される~。


「ぴす、ぴす」と何だか不思議な鳴き声のその犬のような妖怪は大人しい。

抱っこしても撫でてみても、お利口さんにしている。


(家に持ち帰ったら怒るかな…、)


でも可愛いし、ペットにしたい。
だって私に付いてくるもん!!これ絶対なついてるよ!!


お爺さんとお別れした私は、この可愛い妖怪を抱っこして急いで屋敷へと戻った。