「どうだ?俺の雪は。」


なぜ、俺はイラついている。
俺以外の者に雪を“嫁”などと言う権利などない。


「凄く、素敵です。」


頬を赤くして、真っ直ぐに俺を見るヤタガラス。


(…惚れたか)


「悪いがアイツはやれない。」


雪は、他のやつが簡単に触れて良い存在ではない。

雪に触れて良いのは俺だけだ。

だから、アイツは渡せない。


「やっと、愛しいと思える人が出来たのですね。」


「ヤタガラスの分際で生意気だ。」


「ずっと前から好きでしたもんね!」


「殺られたいか。」


「も、申し訳ありません…!!」


ヤタガラスは確かに上級妖怪だが、だからといって俺のような強力な妖力を持っているわけではない。


ただ、どの上級妖怪よりも心の中を覗く力が優れている。


俺の心の内も読み取るのも容易だ。

無駄に厄介な妖怪だ、コイツは。