――『見つかる前に早く。どこか遠い所へ逃げるんだよ。』 自分は悪い奴ではないと分からせ安心させてから、鎖を解いてあげたんだ。 柊さんは今でもこの瞬間を鮮明に記憶している。 それくらい彼女にとって、衝撃的で嬉しい出来事だった。 負の感情は取り払われ、人間の優しさに初めて触れた瞬間だった。 「……人間は、優しい生き物ですか?」 なぜか、そんな質問を投げかけていた。