「失望した。」 言うつもりなど無かった。 雪のせいではないと、分かっていた。 見知らぬ者の羽織り、壊れた簪と櫛。 ただ湧き上がってくる怒りと、悲しみと嫉妬を静めたかった。 雪にした事はただの八つ当たりに過ぎない。 あの部屋からは、微かにカエデの匂いがした。