「雪です。」 「雪?! 嬢ちゃん白様の所から逃げて来たのか?!」 早くもバレてしまうなんて。 この世界での噂が広がる速さは人間界と同じくらいだ。 「何があったか知らねーけど。何も言わずに出ていくのはヤバくねーか?」 「失望したって言われたんですよ? その羽織りが私に掛けられてて。 何でか、勝手に簪と櫛が壊れてて。 全部私のせいですよ。 でも、今さら屋敷に戻るの怖いです。」 思い出しただけでも嫌だ。 あんな冷たい目なんか、思い出したくない。