人間との恋か、妖怪との恋か。
それかただ単にあの詩が好きで詠んでいるだけか。


(もう寝ようかな…、)


立ち上がった瞬間に、なぜか脳裏に浮かんだ古びた銅鏡。


詩を詠んだあの人が、来いと促しているのかも知れない。

だけど、今は夜中。
出歩くのはいろんな意味で危険だ。


「心配ご無用。そなたを自ら迎えに行けば良い事じゃ。

わっちの悩み事を少し聞いてはくれぬか。」


暖かく気持ち良い風と共に空から舞い降りてきたのは、綺麗な女の人で。


鮮やかで、艶やかな着物を自身に纏(まと)う彼女の口調は、

“花魁言葉”(おいらんことば)

と言われるもの。