顔を上げ、私を真っ直ぐと射た彼女の瞳は、今までのもろさを一気に覆してしまうほど強かった。 ああ、ばかだな。 私も、春瀬も、彼女も。 「ありがとう」 私はそう一言彼女に残し、図書室を後にした。 蛍光灯の黄ばんだ明かりが、がらんどうな廊下を照らしている。 人の気配を感じさせない廊下に、私の歩く靴音だけが響く。 急いだとしても、彼には会えないかもしれない。 こんな時ですら走ることを選ばない私は、やはりどこか欠けていると思う。