階段を上った先に扉はふたつしかない。
1つがお姉ちゃんの部屋。
あたしは<彩愛>とプレートが飾ってある扉を開いた。
「ここがあたしのスペース。
望月くんはこっちのカーテンの向こうだよ」
「…………」
物珍しそうに辺りを見渡しながら、奥のスペースへ行く。
ただでさえ狭い部屋が、ますます狭く見える。
シェアハウスしているわけじゃないのに…。
「……僕がこの部屋入る時、河西さんのスペース通りますよね…?」
「あー確かに。
まぁしょうがないから気にしないで」
「……気にしないで、ですか…」
よほど気になるのか、「気にしないで…」と繰り返す望月くん。
…何か変なこと言ったかな?
「ねぇ望月くん1つ聞いて良い?」
「何ですか?」
「望月くんのご両親、海外行っているんだよね?」
「そうですが」
「いつになったら帰ってくるの?」


