……あぁ。
ここまで言っておいて、名前を出さないのは可笑しいかな?
私はふふっと笑った。
「河西彩愛はその時…白井真幸だって名乗ったの」
「……」
あんまり驚いた顔をしない。
さっき、少しでもわかったからかな?
「そしてアヤメが当時恋をしていたのは…望月桜太」
「……おう、た?」
信じられない、とでも言うように目を丸くする彩愛。
私は頷いた。
「アヤメは地味で目立たない図書委員の女の子。
憧れていたのは、同じクラスで同じぐらい目立たない望月桜太。
望月は当時図書室にせっせと通っていてね。
アヤメはそれを見るだけで満足していたの。
だけど、アヤメの近くには、白井真幸と言う可愛い女子がいた。
望月は本目当てで通っていたんだろうけど、恋する女の子の気持ちは簡単に暴走するの。
望月が初めて話しかけてきた時、自分は白井真幸だと名乗ったの。
だからショック受けたんだろうね。
望月が真幸に恋しているって知った時は。
それから間もなくだよ。
アヤメが階段から落っこちて記憶を少し飛ばしたのは」
「……どうして、桜太が真幸さんに恋しているって、知ったの?」
「望月が、本物の白井真幸と話しているのを見たんだよ。
それで恋しているって、勝手に勘違いしたみたい。
望月を想って泣いているアヤメ、私は今でも覚えているよ」


