「何それっ…！
あたし、そんなの知らないよ！」
……そもそもだ。
本名を言うのなら、帽子で自分自身を隠す必要などなかったのではないか。
あの見た目は、明らかに自分自身を隠しているように見えた。
「……もしかしたら、あの子が胡桃さん…？」
何で、俺のこと知ってるんだ。
俺だけではなく、真幸のことも。
「……聞き覚えない？
倉田（くらた）って名字に」
「倉田……？」
「胡桃の名字なんだけど…って、知っているか」
「……倉田？
胡桃さん、名字が倉田っていうのか？」
「そうだよ？」
１年の時から胡桃さんとは同じクラスだった。
だけど、自慢じゃないが自己紹介なんて聞いたことがなかった。
面倒で、聞いているフリだけしていた。
