「あの、ノートを出し忘れて……」
そう言って、ノートを差し出すと桐崎くんは歩いてきてノートを受け取った。
少し顔を上げると、桐崎くんが近くにいる。それだけで嬉しくなる。
桐崎くんは、受け取ると私からすぐに離れた。
「ん、受け取ったからもう用はない?」
「え……?」
私と目を合わせない桐崎くん。
「………あ、のっ」
勇気を出して声を出すものの話すことがない。
「傘、今返すよ、助かった。
じゃ、これでもう関わらないで」
そう言って、綺麗に畳まれた傘を私の手のひらに置くと歩いていってしまう。
"もう、関わらないで"
そんなの、諦めてくれって言ってるようなもんじゃんか。
「うっ…うぅっ……、」
誰も通らない廊下に、一人残される。
私の泣き声だけが響いてたーーー。



