「パソコンか、スマホのせいかな?
 身体の中心を真っ直ぐに。
 …そう、顎は引いて…それは引きすぎ」

 三鷹社長は滑らかに手を動かしながら、燈子の姿勢を矯正してゆく。
 
 皆がこちらを注目している。
 恥ずかしいようなくすぐったいような燈子は気が気でない。

「下腹に力を入れて」

「ひゃっ…」

「歩いてごらん。踵と爪先を同時に着地させる。さあ、自信をもって」

 店員と客達の目が、自分達に釘付けのなか、燈子はこわごわ足を踏み出した。


「…できた!
ね、キレイに歩けてますか!

うわっ」


 嬉しそうに振り返った途端、再びバランスを崩した燈子に、社長は微笑みながら右手を差し出した。


「さあ、行きましょうか、お嬢さん?」