-夏菜side-


ユリと玲央が大樹様に連れて行かれて、部屋には私と会長様と広大さんの3人だけになった。


「………緊張しておるのか?」


「ええ………。お恥ずかしながら。私は社交デビューしてまだ数年ほどなので。」


緊張して足が震えそうなのをなんとか抑えるのに必死。


「立つのも話しずらいからこちらへ案内しよう。」


ウィーンと音がした方を見ると、壁が少しずつ開いていった。


よく見れば入ってきたドアの隣だった。


どういう構造なんだろう………?


「ここは資料室だ。」


『指紋認証完了。秋本誠一郎本人です。』


指紋認証を備えるほどの資料室って………!







中は貴重資料で溢れかえっていた。


質のいいソファーと机を1セット備えてあり、資料室内で読みやすい様になっている。


広大さんに勧められた場所に座り、会長様と向かい合った。


広大さんはいつの間に用意していたのか、紅茶を淹れてくれた。


「広大、わしの横だろうが今は。」


「それもそうだな。じゃあお言葉に甘えて。」


仲良さそうな雰囲気。


「ちなみに言っとくがこの部屋のことは内密にな。知っている人はわずかだから。」


「はい、かしこまりましたわ。」


そんなところに案内して一体なんの話をなさるんだろう……。