はぁ……。
やっぱりこの人には敵わなかったか。
俺はジンさんをじとっ。と見つめた。
ラグナのことは譲るけど、せめて店の中ではいちゃいちゃされたくない。
それはわかってほしい!!
すると、ジンさんは、にや、と不敵な笑みを浮かべて俺に言った。
「じゃあ、今日の夜は邪魔するなよ?
ちゃんとラグナの家に行くから。」
「えっ………いや…宣言されても…。」
俺は積極的なジンさんの発言に動揺を隠せない。
………ふっ。
……邪魔してやる。
少なくとも、二人が都市にいる限りは。
ラグナが、俺を解雇しない限りは。
ずっと二人の邪魔者になってやる。
……………。
…………なんてね。
ラグナの幸せそうな顔を見て、
俺は、ふっ、と軽く微笑む。
心の中では、ちゃんとわかってるんだ。
俺は、ラグナの“犬”だから。
“ご主人様”には、一生忠誠を誓うのさ。
彼女が、それで幸せになってくれるならね。
初恋は実らないというけれど
これでもう俺の“初恋”は終わったから
次はきっとうまくいくだろう。
俺の隣にいてくれる大切な人が
きっと見つかると
そう信じたい。
*第1章・完*