ジンさんは一呼吸置くと、俺の方を向いた。


蒼瞳がまっすぐと俺を捉える。



「…違ったな。」


「え…?」



ジンさんは、軽く微笑みながら言う。



「僕は、“ノラ猫”なんかじゃない。“飼われてた”のさ。

……ずっと昔からね…。」



どくん。



俺の心臓は、鈍く音を立てた。



ジンさんのご主人様は誰かって?


そんなの、決まってる。



ジンさんは「ふぅ…」と、息をして続けた。



「あんな手のかかるご主人様は他にいないよ。

しっかりしてそうに見えて…全然なんだもんな。」



そう言ったジンさんは、いつもの彼では
無かった。


そして、いつもより何倍も優しく、包み込むような声で、そっ、と呟く。



「あいつを、いつも僕の目の届くところに置いておかないと……心配でおちおち散歩にも出られないよ。」