「……無事で……よかった………。」



俺は、彼女を抱きしめながら
小さく、そう呟いた。


それは、俺から無意識に出た言葉だった。


カトレアが…生きてた…。


俺よりも一回り小さい彼女の体は、初めは少し固まっていたが

徐々に、俺に体重を預けて行った。


…やっと帰ってこれたんだ。

君の元に……。


その時、カトレアの体の力が
ふっ、と抜けた。

俺の体に、がくん、と倒れこむ。



「!…カトレア?!」



彼女の顔を覗き込むと、カトレアは意識がないようだ。


すると、ロイが、俺に近づいて言った。



「感情が高ぶりすぎて、気を失ったんだ。

心配は要らないさ。彼女を連れて、カフェに戻ろう。」



“お前の手の怪我も、治さないとな。”

俺は、そう呟いたロイに「あぁ…」と、返事をする。


ロイがこの時、俺に意味深な視線を送っていたことに

俺はまだ気づいていなかったんだ。