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「……やっぱりここは、願いの町より冷えるな…。」



薄暗い石作りの遺跡を進みながら、俺は外套を体に、ぎゅっ、と巻きつけた。

ただでさえ、一年中気温が低めなこの地域だが、この遺跡は外部の熱を遮断するため、町とは桁違いの寒さだ。


ここは太陽を遮断している、“夜の遺跡”。


……考えてみれば、願いの町には、星や、月の形をした窓や、街灯ばかりだ。

この地域には、“夜”を象徴するものが多い。


俺は、魔法で作り出した明かりを頼りに、
コツコツ、と遺跡の奥へと進んでいく。


……一番奥は、俺が落盤事故に巻き込まれた地点だ。


崩れ落ちた先には、瓦礫が道を塞いでいて、もう行くことが出来ないが

せめて指輪がそこに行くまでの道に落ちていてくれれば、見つけることができる。


あの事故以来、再び遺跡が崩れても被害が出ないように、この遺跡は立ち入り禁止になったらしいし

ここは、六年前の当時のままだ、ということが救いだ。


野盗に指輪を見つけられて持ち去られたという心配はない。