うっ!


墓前の花を持ってきてくれたのか?


カトレアのことを思うと、心がツキツキと痛む。


俺は花を見ながら、はぁ、と息を吐いた。


ドロシーがそんな俺を見て言う。



「お兄ちゃんって、まだカトレアさんのこと好きなの?」


「!」



ドロシーが、俺の心の奥へと突き刺さる
質問を口にした。


俺は「ん……。」と、言葉を濁す。


俺は彼女を傷つけたんだから、今更好きになってはいけないんだ。


その時、俺の頭にある記憶が浮かんだ。



「そういえば……。

ドロシー!俺が落盤事故に会った日に、
この部屋で“小さな箱”見なかったか?」


「“小さな箱”?」



それは、俺がカトレアとカフェで最後の時間を過ごす予定のために

彼女に贈ろうと用意しておいた“指輪”だ。


あれを渡して、告白するつもりだった。


あの日……事故が起きなければ、の話だ。