するとロイは、はぁ、と息を吐いて
俺の肩をぽん、と叩いた。



「彼女……待ってるぞ。

死んだと思っている今でも。」



「!」



待ってる……?


カトレアが、俺を、か…?



俺は、動揺を隠しきれず、立ち尽くす。


ロイは、それだけ言い残すと、
くるり、と背を向けて歩いて行ってしまった。



……カトレアと、ちゃんと話せってことか?



「そう……だよな…。」



この六年間、触れずにいたこの大問題に
ついにケリをつける時が来たんだ。


このままずっと、逃げ続けていてはダメだな。


俺のためにも。

カトレアのためにも。


…このまま彼女を縛りつけたままだと、カトレアは次の恋にも進めない。


こんな、いつまた本当に死ぬかわからないような仕事に就いてる俺よりも、いい男なんかそこら中にいる。


……ロイだって、ずっとこの町で、カトレアのすぐ側に居てやれる。


俺を選ばないでくれ。


俺を、ちゃんと失恋させてくれ。


カトレアには……本当に幸せになってもらいたい。


……この二週間の間に、ちゃんとカトレアと話をしよう。


俺は、そう心に決めて
月の塔へと歩き出したのだった。