彼に連れていかれたのは屋上だった。
思ったよりも人がいない。
「空いててよかった」
彼はポツリと呟いた。
私はその意味がよくわからず、順を見上げた。
彼と目が合う。
ドキッと胸が高鳴った。
思わず下を向く。
「これは…どういう…」
自然と言葉が出た。
「ごめん…俺もテンパっててよくわかんない」
彼は屋上の柵のところまで歩くと、柵を背に座った。
「多分、辛そうに見えたからだと思う」
「……」
心配してくれたんだ…。
胸がどんどん高鳴っていく。
でもこれってなんでも出来そうな気がするんだな。
私は彼の隣に歩を進めて、座った。
彼の顔をしっかりと見て、私は口を開けた。
今は心が味方してくれてる気がするの。
「すいません、心配かけて。でも嬉しくて涙が出てきたんです」
「えっ!?そうだったのかよ…」
「はい。沙也加ちゃんと話せて嬉しくて」
「…ごめんな、沙也加になんかされたのかと思って無理矢理連れてきて」
「ううん。驚いたけど、心配してくれて嬉しかった」
自然と笑うことが出来た。
太陽の笑顔には敵わないけど、ちゃんと人の顔を見て笑えた。
順は頭を掻いて、私から目を反らした。
しばらく空を見上げたかと思うと順は小さな声で呟いた。
「俺さ…中学の時、いじめられてたんだ」
頭がフリーズした。
その瞬間、風の音とか周りの話し声が掠れて聞こえた。
「変わろうって思ってここに来た。親も引っ越してさ」
どうしよう。
静か。
何もかもが止まったみたい。
「俺変われてるのか怖くなる。みんなどう思ってんのか気になって仕方ないんだ」
何て言ったらいいの??
「美月を見ると、昔の俺と被って…放っておけなくて…だから俺すごい嫌な奴なんだよ、お前に話しかけたのもここに連れてきたのも全部自分のためなんだ…ごめん」
「…そんなのいいです!」
反射的に言葉が出た。
彼に視線を合わせる。
彼の瞳が潤んでいるのが見える。
不器用なわたしだけど、正解かわからないけど、伝えたいことがたくさんあるの。
