「顔をあげてください」



彼女に呼びかけ、わたしはニコッと笑顔を向ける。



「今日はすごく楽しかったです。

いい経験をさせてもらいました」



「ほんと? よかった」



「一人で帰れる?」

と藤井さんに心配されつつも、彼女を見送る。




そうやって、1日は終わった。




家に帰って化粧を落とすと、鏡の中にはわたしがいた。



藤井 志保みたいに、顔も小さくなくて。

目もあの可愛らしい猫目じゃない。



もう、恭弥くんの隣にもいられない。