【完】午後7時のシンデレラ




「くっそ...なんで俺が」


舌打ちをし、心底嫌そうな様子。

眉間に寄ったしわが迫力を増している。


「あ、あのあの...」


スタッフさんやマネージャーさんに助けを求める。


「大丈夫大丈夫。恭弥はおとなしいからさ〜」


へらへらと笑うカメラマンさん。


「次逃げ出したら...わかってんだろうな」


ドスの効いた声で脅すマネージャーさん。


逃げ出すか、真実を言うタイミングを完璧に逃す。


ふと隣に気配を感じて見上げると、そこには相手役の彼がいた。


「時間ないんで行きますよ」


年上の雰囲気を感じる。

逡巡するわたしに”プロなんでしょ?”とでも言いたげな挑発する瞳を向ける。



「これ以上、手間かけさせないでください」



大きく息を吸い込み、肺全部から息を吐き出す。

覚悟を決めリュックを持つ手に力を入れる。