「くっそ...なんで俺が」
舌打ちをし、心底嫌そうな様子。
眉間に寄ったしわが迫力を増している。
「あ、あのあの...」
スタッフさんやマネージャーさんに助けを求める。
「大丈夫大丈夫。恭弥はおとなしいからさ〜」
へらへらと笑うカメラマンさん。
「次逃げ出したら...わかってんだろうな」
ドスの効いた声で脅すマネージャーさん。
逃げ出すか、真実を言うタイミングを完璧に逃す。
ふと隣に気配を感じて見上げると、そこには相手役の彼がいた。
「時間ないんで行きますよ」
年上の雰囲気を感じる。
逡巡するわたしに”プロなんでしょ?”とでも言いたげな挑発する瞳を向ける。
「これ以上、手間かけさせないでください」
大きく息を吸い込み、肺全部から息を吐き出す。
覚悟を決めリュックを持つ手に力を入れる。

