悪気も何も感じられない、ニコちゃんマークが微笑んでいる。


「うそでしょぉお?!」


思わずトイレの中で叫び、カバンを掴んで彼女の姿を追う。



道路に出て左右を見渡す。


「いない...」


いつの間にいなくなったのか、彼女の姿は見当たらない。


「どうしたらいいんだろう...」


決して体験したことのない状況で、頭が混乱する。


すると突然左手首を掴まれる。


「藤井さ———」


「もう逃がさねえぞ志保」


にっこりと微笑むスーツ姿の男性。

メガネの奥の瞳は全く笑っていない。


ギリギリと手首を掴む力が強くなる。


あれ...これ、やばいやつ?