ねぇ、松風くん。



***


「……なんで俺なわけ?」


明らかに嫌そうな顔でそう発したのは、言うまでもなく松風くんで


「はぁ?お姉様の言うことが聞けないの?今月の給料減らすわよ。」


有無を言わせぬ物言いで脅しをかけているのが綾菜お姉様です。


「…ったく、姉ちゃんのその曲がった性格 母さんそっくり。」


呆れたように溜息を零した松風くんは、一度落とした視線を再びあげると、視線の先に私をとらえた。


「…っ!」


目が合うだけでこんなに緊張したのは初めてで、体はカチコチに固まって、口の中の水分は一気に20%ほどになってしまった気がする。

喉カラカラ。


「……だって。
まずは注文の取り方から。」


すぐに理解できずに脳内で3回ほど繰り返したあと

「あ、よろしくお願いします!」


緊張がほぐれるように、なるべく大きな声で、そして笑顔で答えた。