ねぇ、松風くん。



「ホラ!ボケっとしない!場所取りするよ!」


「あ、ちょっと待って!」


しかし、ホッとしたのも束の間。
これから男子の決勝が始まるのだ。


全く乗り気じゃない私の手を無理やり引っ張り、人混みを掻き分けた菜穂は、あたかも”ココは最初から私たちの場所よ?”とでも言いたげな眼差しで周りの人を押し退ける。


「…す、すみません、ごめんなさい!」


そんな菜穂に代わって頭をさげる私。


「よーし、ここならバッチリ見える!」


菜穂の声に顔を上げれば、コートのちょうど真ん中あたりの最前列。

いや、こんなよく見えなくていいし!ってかこれじゃ選手たちからも私たちのことバレバレじゃん!!