ねぇ、松風くん。



その頃の葵はーーー


「なーにボケーっとしてんの。腹でも壊した?」

「…別に。」


バイト中、今日の集中力は今ひとつ。


いつもよりミスが多い俺に気づいたらしい姉ちゃんが控え室で休憩中の俺を見てため息を零した。


「ふ〜ん。別にって顔じゃないけどね。」

「だから、何でもないって。」


そう言って、コーヒーを一気に飲み干した俺は姉ちゃんから逃げるように立ち上がる。

「……優ちゃん。」

「っ!」

突然 あげられた佐々木さんの名前に、俺は全身で反応してしまう。