ベッドの脇に置かれていたイスから鞄を掴むと、キュッと胸に押し込めた。



「……」



必ず目を覚まして、ちぃちゃんと幸せになってね?

絶対。 絶対だよ?






「……バイバイ、ヒロ」



『……ピッ――……ピッ――……』




そして、あたしはヒロに背を向けて、重たい足を引きずるように病室のドアに向かった。

どうしてかな。


ちぃちゃんが戻ってくる前に、この場所を離れたいのに。

なのにどうしてこんなに足が重たいんだろう。


まるで鉛でも着けられてるみたいだ。



早く
早く
早く

……早く!



ようやくドアにたどり着いて、その手を伸ばした瞬間――……。


あたしが開けるよりも早く、扉が開かれた。



「あれ? どうしたの、ユイちゃん?」

「……あ、っと……えーと。あッ暑くて」



両手にサイダーやオレンジジュースの缶ジュースを抱えたちぃちゃんは、入り口に突っ立ったあたしを不思議そうに覗き込んだ。


お、遅かった!



「暑い? そうかな……今日は特別冷房が効いてるから窓を開けてたくらいなのに……」



そう言ったあたしをさらに不思議そうに眺める。
首を捻って病室の窓に目を移したちぃちゃんの顔色が急に変わった。



「ちぃちゃん?」