電話をかけて、コール音を聞きながらレジの順番を待つ。
あと3人。
気は長い方なので、待つのは苦じゃない。
しばらくの間、機械的なコールが耳に聞こえていたけど。
やがてコール音が終わり、1ヶ月ぶりに聞く佑梨の声が流れ込んできた。
『弘人……?』
「うん。久しぶり」
いつもの調子でそう言ったら、電話の向こうで『ふふふ』と笑い声がした。
『もう2度と連絡なんて来ないんじゃないかって思ってたのに』
「………………どうして?」
『ひどい姿を見せちゃって、この間はごめんなさい』
謝るところじゃないだろ。
その前に、「どうして?」っていう俺の質問に答えてないし。
眉を寄せて言葉をかけようとしたら、先に彼女によって遮られた。
『もう、会いたい、って言われても、会いに来ちゃダメだからね』
一瞬、なんのことを言われているのか理解できなくて、彼女の言葉をいったん頭の中で繰り返した。
「佑梨?何言ってるの?」
『ねぇ、弘人。勝手なこと言ってもいい?』
「なに?」
深く考えずにすぐに聞き返すと、佑梨が電話の向こうで息を飲んだのが気配で感じ取れた。
そして、ハッキリとこう言った。
『恋人関係を解消してください』



