梅雨本番という感じで、夜になったら大雨に変わった。
天気予報によると、梅雨明けもそう遠くないらしい。
夏は苦手だ。
仕事上、炎天下の下で引っ越しの荷物を運ぶのは地獄と言ってもいい。
まとわりつく強烈な湿気と、体に張り付くシャツの気持ち悪さと言ったらない。
冷房の効いた涼しい部屋で、パソコンをひたすらいじるような仕事に就けたらと思うけど。
今の仕事は嫌いじゃないから、やめるつもりもない。
オフィスに缶詰でひとつの場所から動けないよりは、一心不乱に体を動かせる仕事の方が俺には向いている。
昔から身長も体力もそれなりに人よりはあったから、仕事を選ぶのに苦労はしなかった。
早番で仕事を終えて、いつもの定食屋で夕飯を済ませる。
今日の日替わり定食は「和風ポークソテーとエビフライ定食」。
なかなかのボリュームの定食をものの5分で胃袋におさめたあと、家の近くのスーパーに立ち寄った。
そこで朝ご飯用のパンや、食器用洗剤、洗面所に立て掛けてあるボサボサになった歯ブラシの替え、サラダ油、卵4つのパック、牛乳、納豆。
ポイポイと買い物かごに入れてレジに並んでいた。
佑梨と連絡を取らなくなって、どれくらい経ったんだっけ。
1ヶ月までは経ってないか。
俺が連絡しなければ、彼女から連絡が来ることなんてほとんどない。
彼女のアパートに泊まったあの日が、最初で最後の彼女からの連絡だった。
1ヶ月前のことなんて無かったように、普通に電話してみるか。
自分から『偽恋人』を提案しておきながら、ここまで放置してしまったことに後ろめたさを感じていたのもある。
せっかくだから、夕飯を食べなければ良かったな。
彼女に予定が無ければ、一緒に食事でもどうかと誘えたのに。
用もないのに連絡するのは変だろうか。
土曜日の夕方のスーパーは、恐ろしく混み合っていて。
レジなんかは長蛇の列だし、俺の番が来るまで相当時間がかかりそうだ。
とりあえず、彼女が元気かどうかだけでも確認しよう。
そう思って、左手に買い物かごをぶら下げつつ、右手で携帯を操作した。



