俺が恋愛で悩んでるとでも勘違いさせてしまったようで、扇さんは信号待ちのタイミングでポンと肩を叩いてきた。
「さては彼女と喧嘩中だな?男から謝った方が得策だぞ。女はあとからネチネチ言ってくるからな」
「は、はぁ……。肝に銘じます」
喧嘩なんて、したこともない。
いつでも俺は、沙織に甘く接してきたから。
彼女がしたいことをしていた。
嫌がったり、悲しむ顔を見たくなかったから。
でもそれはおかしいのか?
好きな人を大切にしているつもりだったけど、違うのか?
━━━━━あぁ、面倒くさい。
だから恋愛は面倒なんだ。
考えると疲れるから。
沙織との関係を終わらせたときに決めたじゃないか。
もう面倒な恋愛はしない、と。
なんで恋愛なんかでここまで悩まなきゃいけないんだ。
恋人だの結婚だの、どうしてみんなはそれを俺に強要するんだ。
一般論を俺に押し付けないでくれ。
もう『2番目』になるのはごめんだ。
仮にちゃんとした恋愛をするなら、最初からその人の最愛の人でありたい。
余所見も出来ないほどに、その人を愛し抜きたい。
そんな人、きっといないだろうけど。



