2番目じゃなくて、2度目の恋



仕事のあとは、深夜も営業している定食屋で日替わり定食を食べて帰る。
24時間営業のスーパーで必要なものを買ったりもするけど、日用品以外でこれといって欲しいものもない。


毎日これの繰り返し。


時々職場の同僚とか、学生時代の友達から飲み会の誘いがある。
仕事のシフト次第でできる限り参加する。
恋愛以外の人間関係で苦労したことはない。
俺は可もなく不可もない、普通の男なのだ。
恋愛以外では。





二軒めの荷物の運び入れを終えて三軒めに向かう途中のトラックのなかで、さっき俺に手伝ってくれと頼んできた3歳年上の扇さんが運転する俺に話しかけてきた。


「望月さぁ、お前いま彼女いるのか?」

「え?なんでですか?」


家族でも親戚でもない人に容易に嘘をつくのもなぁ、と思って、質問には答えずに聞き返した。
すると、彼は缶コーヒーを左手にかまえながら苦笑いした。


「奥さんの友達で、恋人募集中の子がいるんだと。望月なら年も近そうだし、仕事も真面目だし。浮いた話も聞いたことないからお前に紹介したいなって思ったんだ」


俺の恋愛事情を誰かに話したことはない。
だから扇さんは俺には恋人がいないと踏んだのだろう。
やっぱり30歳の前後はみんな結婚したがるということなのだろうか。


運転しながら、なんと言って断ろうかと考える。
家族や親戚以外にもこういうことがあるのか。


「あれ、もしかしてその様子じゃ彼女いるのか?」


なかなか答えない俺に代わって先に答えを予測してくれた扇さんは、申し訳なさそうに肩をすくめた。


「なんだ、じゃ今の話は聞かなかったことにしてくれ」

「…………すみません」


謝りながら、『彼女』って、『恋人』って、誰のこと?と自問自答した。