週末の土曜日。
私と吉川さんは飲み屋の多い国分町に繰り出し、合コンがおこなわれることになっているダイニングバーへ向かっていた。
午前中は仕事をして、午後は休診だったので吉川さんと二人でランチしたり買い物をしたりしてブラブラ街を歩いて時間を潰した。
絶対にスカートかワンピースを着てきなさい、という彼女の命令ともとれるアドバイスを無視してスキニーデニムで出勤したら、「それじゃないっ!」と怒られ。
仕方なく空いている時間に無難な白いスカートを買ってそれに着替えた。
吉川さんは自分で気合いを入れていると言うだけあって、清楚な印象を与えるようなとても素敵なワンピースを着ている。
彼女の本気度と私の冷静さを比較すると、だいぶ温度差を感じた。
午後からランチやらケーキセットやら色んなものを食べてしまったのも相まって、合コンの前にすっかりお腹いっぱいになってしまった私は、もう帰りたいモードになってたりして。
もちろん吉川さんには内緒なんだけど。
「吉川さん。もしも今日の合コンで、タイプの人がいなかったらどうするんですか?」
ざわめく週末の街の中で、いつもよりメイクの濃い吉川さんに聞いてみる。
すると、彼女は当然のごとく即答した。
「タイプの人?そんなの後付けでいいのよ」
「え……、後付けですか?」
「そ。今日はとりあえず気の合う人さえいればつかまえておくの。顔とか中身とかがタイプかは置いといて、結婚するに値する人かどうかを見極めるのよ」
「結婚ってそれでいいんですか?」
「いいのよ~、恋愛と結婚は別物なんだから」
あまりにも彼女が堂々と答えるものだから、私までつい「なるほど~」と納得させられそうになってしまった。
恋愛と結婚は別物なんて、考えたこともなかった。
恋愛の延長線上に結婚があると思っていたから。
「水戸さんも、今日は結婚相手を見つけるくらいの気持ちで臨むのよ?要は生理的に受け付けない人じゃなければいいってことよ」
ものすごい極論を平気で口にする吉川さんを、私はただ呆然と眺めながらうなずくしか出来なかった。



