「婚活……してみようかなぁ」
私がボソッとつぶやくと、キラキラ目を輝かせて美鈴が身を乗り出してきた。
「ほんと!?いいじゃん、いいじゃん!なんなら旦那から誰か紹介してもらうからさ!」
「あ、いいね。素敵な人でお願いします」
「佑梨なら引く手あまたでしょ」
「そんなまさか」
私と美鈴は笑い合った。
きっと彼女のことだから、本当に誰かを紹介してきそうな予感がしたけれど。
でも、美鈴ならナントカさんよりはマシな人を連れてくるんじゃないかな。
少なくとも、『偽恋人』になるように求めてくるようなことはしない人。
一人暮らしのアパートに帰って、8畳のリビングにポツンと1人で過ごしているとふと思うことがある。
敦史以外に好きだと思える人に出会えるのかな、って。
恋を始める感覚は、もう覚えていない。
好きになる瞬間も、記憶が無い。
もう17年も前のことだから━━━━━。
そして敦史以外の人のキスや、それ以上のことも受け入れられる気がしなくて、考えるだけで怖くなる。
嫌でも染み付いてしまった敦史の温もりが、彼から離れて半年経った今もまだ消えてくれないというのに。



