小学4年生の私が彼に恋をしたのは、それから程なくしてすぐだった。
『転校してきたちょっとかっこいい男の子』というやんわりした憧れに似た気持ちから、『見ているだけでドキドキする好きな男の子』という明らかな恋心に変化を遂げた。


クラスの他の女子を「○○さん」と呼ぶのに、私のことだけは「佑梨」と呼んでくれた。
学校帰りにエレベーターホールや家の前の通路で会うと、必ずと言っていいほど「家に来なよ」と誘ってくれた。
2人でテレビを見たり、ゲームをしたり、時には学校の宿題をしたり。
小学校のうちはそんな温かな毎日を過ごしていた。


中学校は、敦史も私も地元の公立中学校へそのまま上がった。
4つの小学校からそれぞれ集まる中学校。
そこでついに、敦史の存在が開花した。


中学1年の時は、同級生の注目の的。
中学2年の時は、同級生にも後輩にも人気が出た。
中学3年の時は、もう学校中の女子が彼の存在を知っているというほど、彼を好きな子が数え切れないほどいた。


卒業式では制服やワイシャツのボタンを女の子たちにむしり取られ、3月の寒空の下、ダッフルコートの前をキッチリ閉めて震えるように帰っていたのを覚えている。


私たちの『友達』という関係に変化が生じたのは、中学3年の時だった。


いつものように、マンションの通路でたまたま会った私が彼に誘われるまま家へ行き、彼の部屋へ通され、一緒に受験勉強をしていた時。
話の流れで目指す高校が違うことが分かり、私が「寂しい」と口にしたら、何の前触れもなくキスをされた。


だけどその時はすでに、彼には同級生の彼女がいた━━━━━。