弘人を部屋に通して、すぐにキッチンでお茶の準備をしようとしたら彼に呼び止められた。
「佑梨。飲み物とかはいらない。長居はしないから」
「え…………、でも……」
「少しだけ、話をさせて」
いつになく真剣な表情をしている弘人の顔を直視できず、私は目を泳がせながら部屋へ戻り腰を下ろした。
すると、そのタイミングを待っていたかのように彼が切り出した。
「謝らないといけないことがある」
「な、なにを……?」
どのことを?
キスしたこと?それとも私の部屋に泊まったこと?
いや、全部?
短すぎる思い出と呼べるかどうかの記憶が蘇って、ギュッと胸が痛む。
「嘘をついてたこと。たぶん、佑梨は全部気づいてたと思うけど」
弘人の言葉で、私はハッとした。
嘘なら、私だってたくさんついた。
数え切れないほど。
「そ、それを言うなら……私も嘘ばかりついてたから。全部なんて分かんないよ。どこからどこまでが嘘なのか、そこまでは見えないもの」
「きっと俺たちは似たような嘘をついてたと思うんだ。どうかな?」
「………………そうね。私もそう思ってた」
私はようやくこの時、弘人と正面から目を合わせることが出来た。
もう嘘をつかなくていいのかな、と思い始めていた。
嘘をつく時、どうしても相手の目を見れなくて逃げていた。
弘人と話す時は、目を見れないことが多かった。
でも、そうしなくてもいいような気がした。
彼が私に全てを打ち明けてくれるような予感がしたからだ。



